IDを学んだIT技術者が海外協力隊で見てきた世界とは!?
第76回まなばナイトレポート
2026年6月13日、第76回まなばナイトが銀座で開催されました。
現地参加18名、オンライン参加13名、合計31名が集い、「経験を知に変える」という共通テーマのもと、2本の話題提供と対話型セッションが展開されました
熊本大学大学院 教授システム学専攻(GSISコース)の前期課程第1期修了生でIT技術者の加地正典氏より、2024年から2026年にかけてボツアナ共和国でのJICA海外協力隊活動の経験が語られました。
ボツアナは南部アフリカの内陸に位置し、サッカーとダイヤモンドで知られる国です。
日本との縁も深く、地デジ放送の日本方式による整備支援や、橋の建設、日本の中古車の普及といった形で両国の関係が息づいています。現地の生活では断水が数日に及ぶこともある一方、インターネット環境は「ギガを購入して使う」方式ながら比較的安定していたとのことです。
活動の柱は「ID×IT」の実践でした。IT環境整備・ICTサポートの業務改善・新システム導入支援という3軸を掲げ、赴任当初は機材が揃っていながら管理が不十分な状況に直面。Moodleの再構築や前任者資料の更新、生成AIの積極活用など、IDの視点を活かしながら現場課題の整理と対応を重ねました。
印象的だったのは、文化や時間感覚の違いが生む「思うようにいかない」経験でした。「アフリカンタイム」と呼ばれる時間感覚、政府の制約、大きな計画を立てるが細部を詰めない現地スタイル――こうした現実の中で、IDで学んだ視点が現場でどこまで活かせるのかを、常に問い続けながら活動されていた様子が伝わってきました。
質疑応答では「一番うれしかった瞬間は?」という問いに、現地学生から『ITインフラの仕組みが具体的によくわかった』と言われた瞬間を挙げられました。一方で「IDerとして十分に活動できたのか」という問いも率直に語られ、現場での葛藤と誠実な自己省察が印象に残りました。
加地さんがどれほど"めんつゆ"に恋焦がれているのかわかる画面
第2セッションは、加地氏の話を受けた参加者全員による対話型ワークとして展開されました。「もし自分が全く新しい環境に飛び込むとしたら、どんなキャリアの資産を武器にするか」という問いかけのもと、各テーブルで活発な議論が生まれました。
「社会人としての基礎力」「後継者育成の経験」「IDの視点から専門領域を超えて活かす」「その場主義で生きる(その人らしさ)」など、バックグラウンドの異なる参加者から多彩な声が上がりました。「経験自体が資産」「異文化では相手の価値観を知ることが出発点」といった言葉が、会場の共感を集めました。
クロージングでは、武蔵野大学 響学開発センター教授(センター長)であり熊本大学大学院客員教授でもある鈴木克明先生より総括が述べられました。「JICAのプロジェクトに携わった経験から、支援者側は実績を出したいと思っていても、現場はそこまでやる気がないことがある」という言葉は、国際協力の現実を突いたものとして参加者の心に残りました。また「日本を好きになってもらう活動の重要性」を改めて強調され、会は締めくくられました。
鈴木先生に熱く語る加地さん
指導教員の喜多先生と。喜多先生が当時を懐かしんでました
「IDと現場の往還」——今回の第76回は、まさにその実践例が凝縮された夜でした。教室で学んだ理論が、南部アフリカの現場でどのように問い直され、更新されていくのか。その軌跡は、参加者一人ひとりの「自分の経験知をどう価値に変えるか」という問いと深く響き合いました。
なお、加地氏は帰国後、クラウドエンジニアとして新たなキャリアをスタートされました。
現在の勤務先のロボットが熊本空港に展示されているとのこと。熊本にお立ち寄りの際は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
学びの場を支えてくださった関係者の皆様、ご登壇・ご参加いただいたすべての方に、心より感謝申し上げます。第77回でもまた、豊かな対話の場でお会いできることを楽しみにしています。
なんかボケててすみません
熊本大学大学院教授システム学専攻 修士課程15期修了生 植草 恵
※写真とコメント