第35回 まなばナイトレポート

『教育現場での実践と工夫 〜教育工学の視点での見直し〜』

第35回まなばナイトは『教育現場での実践と工夫 〜教育工学の視点での見直し〜』と題して、工業高校や看護大学で教壇に立つ方をおふたり(岡本 華枝さん、河合 英光さん)をお迎えし、教育工学を取り入れて創意工夫をされている授業などの実践事例を具体的にお話ししていただく場として平成30年8月25日(土)に開催しました。

まず、オープニングとして熊本大学教授システム学研究センター センター長兼熊本大学大学院システム学専攻 前期専攻長鈴木克明教授から「参加のみなさんには大勢集まっていただき、ありがとうございます。まなばナイトは飲み会です。楽しく飲んで、忘れてしまいそうなことはメモして、明日から使える知識を持って帰っていただければと思います。」とのご挨拶をいただきました。次に、乾杯のご発声を熊本大学教授システム学専攻 非常勤講師 柴田善幸先生からいただきました。

スピーカーの話題提供の前に、参加者同士の親睦を深めるため「日頃の人材育成での悩み共有」として、様々な背景の皆様のご苦労を共有する時間を設けました。この時間だけでも熱く盛り上がっており、会場内の熱気はグングンと上がっていくのが分かりました。

約10分間の親睦後に、本題の話題提供に入りました。話題は、教壇に立つ先生方がどのような創意工夫を交えて授業を進めているのかといった視点でお話をしていただきました。

1人目のスピーカーは、岡本華枝さんです。岡本さんは、看護師として働かれていましたが看護教育にご関心を持たれ、看護大学で講師をされている方です。

岡本さんの話題では、看護大学の授業で「GOLD METHOD」を用いて授業や実習を工夫されていることの発表でした。看護教育では、看護実習としてそれぞれの患者さんに対していろいろなことを考え、いろいろなことを実施しなければならず、その学びのためには「学びの内容をスクリプト化」することで『学びの見える化』が効率的かつ効果的であるとお話をしていただきました。この考え方は、看護教育だけでなく企業内の研修などにも使えるため、ぜひ活用してみてくださいとのことでした。

2人目のスピーカーは、河合英光さんです。河合さんは、一般企業に勤められた後に工業高校の教諭となられ、企業でのご経験や自己研鑽を進められ新たな視点での授業設計に取り組まれている方です。

河合さんの話題では、企業人から教諭になった当初は成績をつけることに不安があったため、様々な勉強会などに参加して「パフォーマンス課題」や「ルーブリック評価」などを用いた授業設計を行った内容を発表していただきました。どのような学びでも目標に到達しているかが大事であり、ルーブリックでの評価を行うことでリアルな文脈となり、物事に対して学生が論理的思考をできるようになったとのことでした。


スピーカーからの話題提供後は、参加者が自所属などで受け持つ研修などの学びをどのように改善していくかについてディスカッションをしていただきました。その中では、同じ看護師資格を持つ方からは、アセスメント能力が低い看護師がいた場合にGOLD METHODを使うことで、状況に合わせた教育ができるのではないかなどの意見が上がっていました。また、ルーブリック評価については3割くらいの方が使用されており、適正な評価のためにもルーブリックそのものを学生に見せるべきであることや、不合格者を出さないためにも学生にルーブリックの項目を作ってもらうのも一つの手段であるとのお話がありました。

クロージングは、鈴木克明先生からお言葉をいただきました。

お二人とも熊本大学大学院教授システム学専攻の出身ではないが、インストラクショナルデザインについて学んでおられ、とても頑張っておられる。次回は、当専攻同窓会からのスピーカーを期待している。

医療者の教育では自分たちの経験をなぞらせたいという思いを感じることがある。しかし、それは非効率的であり、であればスクリプト(枠)として教えたほうが良いとの考えでGOLD METHODが開発された。このGOLD METHODは、日本医療教授システム学会代表理事の池上敬一先生が開発した理論である。レストランスクリプトという言葉があるが、西洋料理を食べに行くと食事の順番があり次に出てくるものが予測ができることがスクリプトである。新人の医療者もスクリプトを用いて教育を進めておけば、急変するかもしれないという予測と急変した場合の対応ができる人を育てることができる。

そして、基本的にルーブリックは嫌いです。なぜなら、チェックリストを先に作るべきであって、一人で良い成績を取れる学生には自分で頑張ってもらい、芳しくない学生の成績をチェックリストで可視化をして努力のポイントを見せることがインストラクショナルデザインの考え方であり、この底上げの技術としてチェックリストを作って欲しい。

参加者の皆さんには、お二人のお話を参考にされてぜひ引き続き尽力してください。とのお言葉をいただきました。

中部地方で5回目のまなばナイトとなりました。年に1回のことですが5回まで続けられたのも、多くの方のご支援ご協力、そして元気をいただいているからです。今回もあっという間の時間が流れ、参加の皆さんからは楽しかった、勉強になったとのお言葉を頂戴することができました。心から御礼申し上げます。中部地方では、夏のまなばナイト、冬の人材育成事例検討会が定番のイベントとして定着してきました。人材育成事例検討会は、平成30年12月1日(土)に日本福祉大学東海キャンパスでの開催が決まっています。今後、SNSなどでアナウンスしていきますので、ご検討をよろしくお願いします。猛暑が続く名古屋ですが、8月25日は熱い1日でした。次回もより良い会を求めて企画していきますのでご期待ください。ありがとうございました。

熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 大石 奨

おまけの画像です