第6回まなばナイトレポート

この世は「誤概念」であふれてる!?

~ 「スキーマ」から考える学びのありかた ~

いよいよ年の瀬が迫ってきた21日、毎年恒例ではございますが東京にて今年最後のまなばナイトが行われました。世間では忘年会シーズン真っ盛りでお忙しい方も多かったと思いますが、会場は多くの参加者でにぎわっておりました。


今回のまなばナイトは、千歳科学技術大学情報システム工学科教授の仲林清先生より「この世は「誤概念」であふれてる!? ~「スキーマ」から考える学びのありかた~」というテーマで、最近出版された『学力喪失』(今井むつみ著)をベースにしながら、スキーマについてあらためて考えてみようというご講演をいただきました。

最初こそzoomと会場とでスライドの共有が上手くできていないといった機材トラブルに見舞われましたものの、会場の皆さんのおかげで無事スタートいたしました。


まずは、人に何かを伝えるとき、何回説明してもうまく伝わらない、、、これは教え方が悪いのか、相手に理解する能力がないのか、こんな風に誰かのせいにしがちだけれども、実はもっているスキーマが違うだけなんじゃないの、こんな問いかけから話は始まりました。スキーマが異なっているせいで起きる誤解の例として、『クリティカル進化(シンカー)論-「OL進化論」で学ぶ思考の技法』から4コマ漫画でクスリと笑う訳や、『学力喪失』での小学校の算数の文章題における誤答の例など、その場にいる本人はいたって真面目だけれどもおかしなことになってしまう事例を紹介し、話を上手く伝えるうえで相手のもつスキーマがいかに重要かをお話しくださりました。その上で、言葉と経験がつながらないと、ただうわべだけを機械的に操作することに繋がり正誤を見失ってしまうという指摘はカーゴ・カルトを彷彿とさせとても印象に残りました。


ではどのようにスキーマを活性化させるか、言葉と経験の結び付けとしての記号接地、スキーマを拡張するためのアブダクション(仮説思考)、スキーマを修正し正しく答えるために必要なメタ認知をキーワードに解説してくださり、そして、仲林先生のご研究のうちスキーマに関するものを挙げ、スキーマと学びについての実践事例についてご紹介されました。最後に仲林先生からのGSIS生に対する強烈な叱咤激励を受け、セッション1は終了しました。


セッション2ではグループワークにてスキーマと学びについて意見交換を行い、その後の発表ではグループごとで話し合った内容を全体で共有しました。グループ毎に色々なトピックがあがっておりましたが、その中でも印象に残ったのが「9時10分前」の話でした。待ち合わせ時間を「9時10分前」とする約束をしていたにも関わらず、ある者は8時50分にやって来て、別の者は9時8分にやって来る。お互い自分こそが正しい時間に来たと主張しケンカになるというお話でしたが、これもスキーマの違いによって生まれる誤解。「9時10分前」という言葉を「9時」の「10分前」と捉えるか、「9時10分」の「前」と捉えるかというお互いの『時間』スキーマの違いによるものだという話は、大変興味深かったです(早速、仕事に使わせていただきました)。

最後に熊本大学名誉教授、武蔵野大学響学開発センター長でありGSIS同窓会の顧問でもいらっしゃいます鈴木克明先生から締めのご挨拶をいただき会はお開きとなりました。

 

年末のお忙しい中、お話しくださった仲林先生、鈴木先生をはじめとするこの場を設けてくださった方々、zoomや会場にお集まりいただいた皆様、本当に楽しい時間をありがとうございました。長い文章となってしまいましたが、まなばナイトの魅力の1/10も伝えられていないかもしれません。ぜひ一度参加されることをお勧めします。

 

次回のまなばナイトは2月22日(土)に開催されます

(修士課程17期修了生  新垣知輝)