OJTを補完するマイクロラーニング型教材の開発
救命救急センターに従事する看護師を対象とした効果的な学びと業務遂行を支援するための研修設計
私事で恐縮ですが8年ぶりにまなばナイト参戦です。6月なのにとにかく暑いです。しかし久しぶりにお会いする先生方は元気そう。もちろん、ヒゲ講師こと武蔵野大学響学開発センター教授であり熊本大学大学院教授システム学専攻同窓会の顧問でもある鈴木克明先生もご健在。しかもそのお隣には「学習設計マニュアル」の共著者の美馬のゆり先生もいらっしゃって豪華な布陣です。ナイトも暑くなること間違いなし。
今回のまなばナイトは、熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生の、東京都立墨東病院救急救命センターにお勤めの西野明子さんです。西野さんの修士論文であり同窓生優秀賞にも輝いた『OJTを補完するマイクロラーニングの開発 〜救命救急センターに従事する看護師を対象とした効果的な学びと業務遂行を支援するための研修設計〜』を話題に参加者全体で学びを深めていきました。
開会のご発生は西野明子さんの指導教員だった後期課程専攻長の戸田真志先生。やや硬く始まりました。
まず初めは話題提供です。西野さんは救命センターで看護師に行われる教育の現状(学ばなければならないことが沢山ある現状、勤務中の学習は困難、指導者によって内容や質が左右される対面型の教育が多い)に対して、スタッフの主体性をもっと大切にしたいという熱い思いから、高気圧酸素治療(HBO)のケアを行うための教育を主題にしてIDの視点から改善を行いました。結果、HBOのケアを行うために必須である対面型研修をeラーニングブレンド型へと変更しLMSで学習管理を行うことで、知識習得の時間を非常に短縮させ知識の習得を可視化することに成功し効率や効果の向上を生み出しました。スタッフが70名もおり、激務の毎日を過ごされている様子とその中でもIDerとして奮闘する様子がとても伝わる内容でした。そして今後は院内に仲間を増やして医療DXを推進していきたいという力強いコメントもありました。
続きまして、グループワークです。「一番興味を引いたこと」「仕事で活かそうと思った具体策」「西野明子さんに聞きたいこと」の3つの問いを軸に進みました。私はヒゲの講師の隣だったので念のため「何に興味を持ったことはありますか?」と聞くと「当たり前のことを当たり前にできていないんだよな」と一言。全く同意でしたが、これ以上は話が盛り上がらずレポートにならない風でしたので、お隣で活発に議論しているグループ席にお邪魔しました。そこでは「学習意欲の高め方が知りたい」「システム作りで最も大変だったことが知りたい」「今後の展望は?」「うちの職場は救命センターみたいにやる気に満ちた人がいない」「学生と社会人の違いは?」「マイクロ化したコンテンツを効果的に見せるにはどうしたら良いか」などと参加者がそれぞれの立場から意見を出し合い、オンライン参加者からも沢山の意見が発表されて、西野さんとの間でも活発な議論が展開されました。
そして総評の時間です。ゲストの美馬のゆり先生から、「激務の中で修士論文を書き上げたのはすごい!」という感想を皮切りに、ID理論の有用性を感じたということや、現場の人が研究的まなざしを持つことの大切さ、AIで起き変わらないのが看護師の仕事であるから今後も励んでほしいと、私にも響く言葉がありました。また次のステップとして、チームとしての視点や他者の視点を取り入れることや、教材化は難しいとしつつも、自ら判断して動くことにつながる身体のコーディネーションをどのようにすればよいかと言った、さすが自己調整型学習の著作もある先生ならではのアドバイスをいただきました。
締めは鈴木先生からです。「当たり前のことを当たり前にできない組織にこういったことを持ち込むことは非常に大変!職場の協力も得られて高く評価されたことは良かった。自分も周囲もハッピーにしなくちゃならん」と激賞&「これからも頑張ってね」と励ましの言葉があり、最後は現地参加者とオンライン参加者とでの記念撮影で70回目のまなばナイトが終了しました。現地開催ではこの後の2次会ではさらに盛り上がったことでしょうね。
今回も多くの皆様にご参加頂きありがとうございました。次回第71回まなばナイトは8月23日(土)午後5時から奈良学園大学保健医療学部教授の服部律子さんをお迎えして、『授業づくりの失敗から学ぶ 〜書籍「看護のための授業づくりガイド」をもとに〜』を名古屋駅近郊で開催する予定です。ぜひみんなでワイワイガヤガヤしていきましょう!
(熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 東京逓信病院看護師 岡崎大輔)