第5回まなばナイトレポート

課題分析図の作成までに苦労したこと・伝えたいこと

理学療法士としてのジョブエイド設計と開発をもとに

新型コロナウイルス感染症は衰えを知らず、7〜8月は過去最大の感染状況となりました。その中でも、第56回まなばナイトには全国各地から多くの皆様に参加いただき、熱く楽しく時間を過ごすことができました。

 

オープニングでは、熊本大学大学院教授システム学専攻(GSIS)同窓会地区活動実行委員会中部地区代表の大石奨から、今年の夏も対面での開催が叶わず残念ですが、オンラインの強みを活かして全国各地から参加をいただいたことに感謝いたします。今回は、初参加の方が多い会となりました。まなばナイトは、お酒を飲みながらワイワイガヤガヤと楽しむ会ですので、お手元にお飲み物をご準備いただいて、チョット一杯やりながら学び合いましょうと挨拶をしました。そして、GSISの鈴木克明教授から乾杯のご発声をいただき会が始まりました。

 

第56回まなばナイトは、令和3年度同窓会優秀論文賞を受賞された奥野将太さんから修士論文の内容でもある『課題分析図の作成までに苦労したこと・伝えたいこと〜理学療法士としてのジョブエイド設計と開発をもとに〜』をテーマに話題提供していただきました。最初に課題分析図の説明として「授業を設計していく際に視覚化して確認できる」「習得状況を直感的に把握しながら学習が出来る」と文献などを参考に可視化することで設計者や学習者にメリットがあるというお話、次に課題分析図を活用して既存のジョブエイドをチェックして課題ごとの前後・上下関係を分析した修士論文のお話、最後に課題分析作成の苦労として課題抽出作業と妥当性確認が大変であったことのお話をいただきました。聴講側の感想としては、担当する理学療法は70項目以上のジョブが発見され、それを課題分析するため家中の壁が付箋だらけになったという内容は印象的でした。また、見直したジョブエイドを活用しながら問題があれば、課題分析図を修正していくとの表明があり、Plan-Do-Seeを続けていく重要性も再認識しました。

 

※日本理学療法士協会webサイトでは、理学療法士はPhysical Therapist(PT)とも呼ばれ、ケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法(温熱、電気等の物理的手段を治療目的に利用するもの)などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門職であると明記されています。

その後、zoomブレイクアウト機能を用いて、まずは参加者同士の自己紹介をしていただき、グループワーク「私が一番興味を引いた部分」「私の仕事で活かそうと思った具体策」を意見交換。最後は、奥野さんへの質問タイムを設けました。各グループにはGoogle Docsに記載していただき、まとめの発表に活用しました。

 

興味を引いた部分では、「研究、素晴らしい、大変な作業だったのではないか。妥当性を確認する作業、72の課題、5つのゴール抽出の大変さが相当大変と拝察される。」「課題分析について経営工学にも通じる部分であり、適応性の広さに感銘しました。」「定型的なことと認識しましたが、適応可能な範囲はどこまであるかというところに興味を持ちました。」「非常に複雑な仕事であること、作業のプロセスをよく網羅できているなあと感心した。壁にポストイットを貼ると言っても、どこから始めたのか、その効率よくするプロセスを詳しく聞きたい」などの意見が出ました。

仕事で活かそうと思った具体策では、「数学の授業で課題をおさえるのに活用できる。」「産学連携PBLの設計と運営をしていると人手がかかり課題山積。応用したい。」「修士論文で活かせる。大学の研究で応用ができる。」「大学非常勤の授業15回ごとに出して戻して、ゴールが明確なものに適応したい。」などの意見が出ました。

まなばナイトの最後は、鈴木克明先生からご提言をいただく時間です。会の中で質疑として上がった『ワークショップなどで「○○について考えなさい」という課題が出されたとき、何が目標で、何を達成されたらクリアとなるのか?という答えがない課題に対しては、どう課題分析図を描くべきか?』についてお話を頂戴しました。

鈴木先生からは、「考えてください」は良いけれど、考えた結果、何が出来ないといけないかを事前に決めておかないと目標設定はできない。「考えてみなさい」は、考えることが目的ではなく、考えた結果何が出てくるのかを問うているわけで、何が出てくるのかは誰もわからない。だけれども何か出さないといけない。だから、何か出せというのが目標になるのでは。出てきたものを分析できないはできないが、例えば戦略的なことだとか、納得感があるものだとか、参加者が「なるほど」と思うことを2つ出せということはできる。しかし、それに至るまでの分析プロセスを評価することはできない。新しく出されたものについては評価はできない。課題分析は、IDの手法であって目標が書ける、明確になっていなければ分析図は対応できないものになっている。目標という形に書ければ、なんとかなるのでは。だから、出された意見に至ったプロセスを分析できないので、課題分析はできない。

一部の人に誤解されていて、目標が明確でなければIDは適応できないと思われている。それは、初心者向けで達成すべきものが明確なものだと。けれども、今回の理学療法士でも何でも相当複雑なことをやっている。それをベテランは簡単にやっているんだけれど、なぜうまくいっているのかをベテランはわかっていない。だからこそ課題分析をする意味があって、課題分析をしておけばできない人のできない部分がわかる。できる人にとって、できない人にどこを補足すればできるようになるのかは、なかなかわからない。それだと教えられない。課題分析しておいて、全体の中のAとBとCができていて、DとEができていないと言えて、それができないと一人前にならないよと言って指導ができる。分析することは、できるという状態をわかっていなければ分析はできない。と、ご提言をいただきました。(私の速記からの転記ですので途中が脱落しているかもしれません。)

 


最後は、クロージングとしてGSIS同窓生の豊場沢子さんからは、最近は日常業務に忙殺されていて、IDのことがすっぽ抜けていることがあったので自分自身を見直そうと今日は参加しました。課題分析図のお話を聞いて、業務でも使えるなあと思いました。奥野さんが分析を進めていく中で、仲間と進められていたということがあり、それはとても良いなあと思いました。そのような仲間づくりも重要だと再認識した第56回まなばナイトでした。今日はありがとうございました。とお言葉をいただきました。


 

第56回まなばナイトは、総勢40人の参加をいただきました。途中、zoomの操作に不慣れな私は七転八倒していましたが、皆様の温かいお心遣いをいただいて無事終了することができました。終了後のアンケートは以下に貼り付けます。また次回にお会いできますことを楽しみに、次の企画を考え始めます。ありがとうございました。

 

(熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 大石 奨)