第24回 まなばナイトレポート

『インストラクショナルデザインの理論とモデル:最新動向ワークショップ』

平成28年8月20日(土)、連日35℃を上回る猛暑の中、第24回まなばナイト@京都、が京都大学百年記念講堂で開催されました。

今回は「インストラクショナルデザインの理論とモデル:最新動向ワークショップ」といテーマで「Instructional-Design Theories and Models」シリーズ、通称「グリーンブック」(以下GB)の編者である、C.M.ライゲルース先生をお迎えしての開催となりました。開催までの時間はGBを手にした参加者の皆さんがライゲルース先生にご挨拶&サインを頂く光景が見られました。

オープニングでは熊本大学大学院教授システム学専攻の平岡斉士先生より、イベントの概要とセッション1のスピーカーである広島大学学院 工学研究科 林雄介先生、熊本大学大学院教授システム学専攻 専攻長 鈴木克明先生のご紹介がありました。

林先生からは「グリーンブックⅢの監訳者が語るIDの理論とモデル」、というテーマでお話をいただきました。「GB」はこれまでⅠ、Ⅱ、Ⅲが出版されており、Ⅲは林、鈴木両先生が日本語版の監訳をされています。またこのまなばナイト翌々日の8/22にGB Ⅳが出版される、という節目の時期でもありました。

これまで出版されたグリーンブックは

Ⅰ:IDに関する様々な理論の関連付け

II:情報化社会に向けた新しい教授理論の整理。

III:「共通知識基盤の構築」として、共通の用語を使った新しい理論の説明

という構成になっており、特に日本語版も出版されている第3巻は、統一したフォーマットを用いてIDの理論やモデルを整理し、それらを比較することでIDにおける「共通知識基盤」を構築するための第一歩とする、という目的が紹介されました。

最後にはGB Ⅲを読むためのコツ、として「目次、統一フォーマットで書かれた各理論の概要を比較しながら読んでみては」という先生のアドバイスがありました。

お話のあとに「この書籍は研究者向けか、実践者向けか?」というフロアからの質問があり、これにはライゲルース先生から直接「実践者向けですよ」とお答えいただきました。

続いて、ライゲルース先生からは、GB Ⅳのタイトルにもある「The Learner-Centered Paradigm of Education、学習者中心の教育・研修パラダイム」というテーマでのお話がありました。ライゲルース先生の講演中は、合間に通訳も兼ねて、鈴木先生から補足やまとめを入れて頂きました。

今回のテーマである「学習者中心」のへのパラダイムシフトが必要な理由としては

個人:時間ではなく、学習に応じて学習者が次に進む

社会:多くの場合で、選抜が必要ではなくなったこと

の2点が挙げられていました。

また学習者中心パラダイムの普遍的原則としてとして以下5つが挙げられました。

1、 Attainment-Based Instruction Competency-based)(コンピテンシー基準型)

2、 Task-Centered(課題中心型授業)

3、 Personalized Instruction(個別化授業)

4、 Changed Roles(役割の変化)

5、 Changed curriculum(カリキュラムの変化)

ライゲルース先生が最後に「本当に学習者中心の学びを進めるには、カリキュラムなど学習の仕組みそのものを変えなければならない」と言われたことが印象的でした。

GB III、一見とっつきにくく、なかなか読み進められなかったのですが、今回その狙いや構成が分かったことで、ぐっと読みやすくなった気がします。また現在ランチョンセミナー(http://cvs.ield.kumamoto-u.ac.jp/wpk/)でGB III(日本語版)の輪読会をやっており、9月中旬から第3部が始まります。水曜日のお昼にオンラインで実施していますので、ご都合があえば一度参加されてみてはいかがでしょうか。

学習者の目標とするコンピテンシーがあり、最初からいきなり課題が提示され、e-ラーニングで個別化学習を行う、などGsisでの学びが「学習者中心」に設計されていたことを改めて実感するとともに、これら学んだことが自分のフィールドで実践出来ているか?実践しようとしているか?を振り返る機会にもなりました。

年1回ペースでおこなわれている関西でのまなばナイトですが、これからもいろんな切り口から開催していきたいと思います。ぜひ、ふるってご参加下さい。