異文化理解は難しい?
〜多文化・多国籍の学び合いを支える研修設計〜
第73回まなばナイトレポート
ようやく秋らしい天候となった11月8日、第73回まなばナイトが開催されました。
今回は初の大分県別府市での開催となり、現地会場とオンライン会場を合わせて30名を超える方々にご参加いただきました。
現地会場には、熊本大学大学院教授システム学専攻 特任教授の中野裕司先生、同専攻 准教授の久保田真一郎先生、武蔵野大学響学開発センター教授であり熊本大学大学院教授システム学専攻同窓会顧問でもある鈴木克明先生にもご参加いただきました。
セッション1 では、中野先生より「GSISの研究科目を通して関わった研究について」と題し、ご自身がこれまで取り組んでこられた研究について、学部、修士課程、博士課程、名古屋大学でのご勤務時代、そして熊本大学に移られてからと、時代ごとに取り組まれた研究テーマやその背景をご紹介いただきました。
その時々における研究上の関心に加え、社会的な研究動向を踏まえたテーマの変遷や、身近な課題を研究へと取り込まれた事例などが示され、研究に取り組む際の着眼点やテーマ選定のポイントなど、今後研究活動に取り組む方々にとって大変学びの多い内容となりました。
また、大学院における一般的な研究指導方法と熊本大学教授システム学専攻(GSIS)での研究指導方法を比較し、GSISならではの研究指導の特色についてもご解説いただきました。
GSIS黎明期の貴重なエピソードを交え、前提科目によって基礎知識を保証しつつ、多様な背景を持つ院生が計画性をもって研究を進められるカリキュラムの特徴についてご紹介いただきました。
セッション2 では、GSIS20期生で立命館アジア太平洋大学(APU)スチューデント・オフィス課長の杉山正純さんと、同じくGSIS20期生でAPUアウトリーチ・リサーチ・オフィス課長の岡田航洋さんより、APUでの実践課題をもとにした研究を話題提供いただき、グループワークとワイガヤを行いました。
まず、APUの概要や特色について説明があり、その後、杉山さんより「学生のための安心・安全に関する啓発教育教材・プログラムの設計・開発」と題し、現在取り組んでいる研究テーマについての発表がありました。在学生の約半数が留学生で、世界110カ国・地域から学生が集まる環境の中、学生支援用教材開発の背景やポイントについてご紹介いただきました。
続いて、岡田さんから「社会人向けD&I教育プログラムにおける実践」と題し、社会人向けの態度形成をめざす研修プログラムにおける効果測定や評価に関する研究について発表がありました。
お二人の発表に対して、各グループからは「修士研究としてはテーマが広すぎるため、もっと絞り込んだ方がよいのでは」「学生の啓発教材はどの大学でも必要だが、具体的な事件・事故の情報は対外公表が難しいため、研究として扱うのであれば工夫が必要」「社会人向け研修で数日間の短期間に行動変容まで期待するのは難しいのでは」など、暖かくも厳しい(?)実践的な指摘やアドバイスが多く寄せられました。
最後に、鈴木克明先生より総評をいただきました。
杉山さん、岡田さんへの励ましのお言葉をいただくとともに、GSISの学びは与えられた課題を研究するのではなく、現実の課題を自分の研究として取り組むことの重要性を改めて感じる機会となりました。まさにARCSモデルの関連性(Relevance)であることを再認識いたしました。
さらに、今回の開催を通じて大分にはGSISとの繋がりが深い方が多く、別府・大分での集まりやすさを改めて確認できたことも大きな収穫でした。
また、大分・別府での次回開催についても検討するよう、重要な“宿題”もいただきました。
その後、現地会場ではそのまま2次会に突入し、さらに学びを交流深める夜となりました。開催にご協力いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。
(熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 栗山俊之)