第29回 まなばナイトレポート
『インストラクショナルデザインを学んでの変化~GSISを修了して~』
第29回まなばナイトは『インストラクショナルデザインを学んでの変化~GSISを修了して~』と題して、中部地方にゆかりのある同窓生おふたり(川村和美さん、佐久間あゆみさん)をお迎えし、教授システム学専攻(GSIS)を修了した今どのようにインストラクショナルデザインが生かされているかを披露していただく場として平成29年8月26日(土)に開催しました。
まず、オープニングとして熊本大学教授システム学研究センター センター長兼熊本大学大学院教授システム学専攻 前期専攻長鈴木克明先生から「恒例の名古屋でまなばナイトが開催できて嬉しく思います。そして、参加のみなさんには大勢集まっていただき、ありがとうございます。飲んで語らいましょう。」とのご挨拶と乾杯のご発声をいただきました。
スピーカーの話題提供の前に、参加者同士の親睦を深めるため「人を育てることに悩んでいませんか?」という題材をもとに、アイスブレークを挟みました。多くの方が名刺交換とともに、日頃の悩みを打ち明ける姿がありこの親睦だけでも実り多い時間となりました。
約20分間の親睦後に、本題の話題提供に入りました。話題は、インストラクショナルデザインの道具の中で、GSIS終了後に自分が最も「目から鱗が落ちた」道具を提示いだだき、その理由を語っていただく方法としました。
1人目のスピーカーは、川村和美さんです。川村さんは、GSISに入学する前から薬剤師育成にご尽力されていて、各方面でご活躍されています。
川村さんの話題では「メリルの第1原理」の提示がありました。これまで、コンピテンシーに基づく薬剤師の育成プログラムを構築するにあたり、いろいろな経験をもとに進めてきた。しかし、「メリルの第1原理」を知った時に、自分がやろうとしている研修は確実に裏付けができ大丈夫なんだと思えたとの話題提供がありました。
鈴木克明先生からも、「メリルの第1原理」はインストラクショナルデザインの第1歩と言える理論であり、現場ですぐに使いやすいのでぜひ使ってみてはとのご助言をいただきました。
2人目のスピーカーは、佐久間あゆみさんです。佐久間さんも、GSISに入学する前から医療系シミュレーションにて、インストラクターとしてご活躍されています。
佐久間さんの話題では「メーガーの3つの質問」の提示がありました。これまで、心肺蘇生法などのシミュレーションを教える時に、上手なインストラクターの真似をして進めていて自分もうまいつもりになっていた。しかし、「メーガーの3つの質問」を知った時に、経験や勘だけではダメなんだということに気づかされ、常にインストラクターが設計しておく必要があり、この道具を忘れないために常に考えながら研修などを設計しているとの話題提供がありました。
鈴木克明先生からも、アメリカのことわざで「use it or lose it」というものがある。やはり、良い道具であっても使わなければ意味はないし、忘れていってしまう。常により良い方法を考えるためにも、活かしてほしいとのご助言をいただきました。
この後、食事とともにテーブルディスカッションを行いました。参加の皆さんには、3つの質問を準備しました。
(1)インストラクショナルデザインを学ぶべき人は誰か
(2)インストラクショナルデザインの良いところ、悪いところ
(3)インストラクショナルデザインを明日から使うために
この頃には、お酒も進み各テーブルで熱く語られる姿がみられました。そして、テーブルでのまとまった意見の発表に移りました。各質問の回答は以下の通りです。
(1)インストラクショナルデザインを学ぶべき人は誰か
自分自身、指導で悩んでいる人、幸せになりたい人、誰かに何かを伝える機会がある人
(2)インストラクショナルデザインの良いところ、悪いところ
【良いところ】
・成果主義だから結果が見える
【悪いところ】
・いろいろな理論を体系的に使えるが、その人の性格は治せない
・インストラクショナルデザインという言葉が取っつきにくい
・成果主義だから冷たい
・手間が掛かりすぎてしまう
・道具が盛りだくさんある
・評価が難しい
・1人じゃできない
(3)インストラクショナルデザインを明日から使うために
・できそうなところから始めてみる
・今やってることを少しずつ進める
・自分がやっていることのデザインを見て少しずつ変えてみる
・今日までの自分について考える。今日寝る前に思い出す
・明日から使うために話し合いができると良い
・使ってみる。まずやってみる
・明日からだったら今日からやる。メーガーの質問について寝る前に答える
・自分がどこまでできているかを考える
クロージングは、ファシリテーターの大石がまとめを行い、日本福祉大学の影戸誠先生からお言葉をいただきました。
大石からは、インストラクショナルデザインは決して冷たいものではないと思う。逆に温かいものだと考えている。その理由は、できない人を見捨てるのではなく、各レベルにカスタマイズされた学びを設計できるため置いてきぼりを作らない。ぜひ、GSISには科目等履修制度もあるため、インストラクショナルデザインに触れていただければ嬉しく思いますとまとめをしました。
影戸誠先生からは、学びにはARCS-Vモデルにもあるとおり意思が重要である。今日はとても良い雰囲気の中で、インストラクショナルデザインについて学び合うことができた。皆さんが今日学んだことを今後生かすには、学ぶという意思が大切であり、ぜひ引き続き尽力していただきたいとのお言葉をいただきました。
中部地方で4回目のまなばナイトは、隣の公園でチャリティーテレビ番組やど真ん中まつりが開催されていましたが、それに負けず劣らず活気溢れる時間であっという間に過ぎました。多くの方々に参加していただき、心から感謝申し上げます。中部地方では、夏のまなばナイト、冬の人材育成事例検討会が定番のイベントとして定着してきましたが、さらにインストラクショナルデザインを学ぶイベントを行おうと話が進行中です。SNSなどでアナウンスしていきますので、中部の動きにご注目ください。今回は、会場を名古屋の中心街栄に変え心機一転のまなばナイト@名古屋でしたが、次回もより良い会を求めて企画していきますのでご期待ください。ありがとうございました。
熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 大石 奨