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第41回 まなばナイトレポート

開催テーマ「学習空間設計を考える」

第41回まなばナイトは、「学習空間設計」をキーワードとして、物理的学習空間をどのように設計するかについて、株式会社富士通ラーニングメディア様の2018年8月にリニューアルされたCO☆PITで開催されました。

第1部は、スピーカーからの話題提供として、非常勤講師でいらっしゃり5期修了生である明石工業高等専門学校の竹岡篤永先生、8期修了生で学校法人追手門学院の辰巳早苗様、非常勤講師でいらっしゃり会場提供してくださった株式会社富士通ラーニングメディア戸田博人先生にご登壇戴きました。

最初に「フツーの学校の学習空間」と題して、竹岡先生から明石高専のアクティブラーニング空間について話題提供がありました。

先ず、明石高専内には、全学的に利用できるアクティブラーニング教室が、2014年に文部科学省AP事業にて整備された1つであることのご紹介がありました。この部屋は稼働率が高く、竹岡先生が担当されている「アクティブラーニング入門」の授業では先にコマ割りされていた英会話の授業で占有されていて利用できなかったそうです。

次に、学内的にアクティブラーニング空間を増やすために視聴覚教室の長机をやめて試験にも使える机を整備したそうです。しかし、この机は折り畳みができない難点があり、やはり自由度が低かったとのことでした。

結果として、昭和30年代後半に作られた校舎の普通教室で小中学校と同じような移動可能な一人ひとつの机と椅子の教室で「アクティブラーニング入門」の授業は開講しています。「一人ひとつの机と椅子の普通教室は非常にフレキシブルな利用が可能であった」と締めくくられました。


続いて、2019年春に茨木総持寺に開設された学校法人追手門学院の中高新校舎について話題提供が辰巳様より、ありました。*1)

「『いつでも、どこでも学べる』新しい学びの空間」として、「脱教室」、「脱図書館」、「脱職員室」、「脱箱型校舎」をキーワードとして設計されたそうです。

この校舎は、中高の先生方が主体となって、「生徒の探求心を主体とした授業であるリフレクション型の授業を実践できる」ようにするために、「校舎すべてを使えるように」、「教室の形を自在に変更できるように」、「教室を開放できるように」との思いから設計されたそうです。そのため、例えば、廊下は廊下としてだけではなく教室と廊下の仕切りを開放することにより2~5つの大きな教室として利用できます。さらに、階段の壁もすべてホワイトボードとなっていて、「どこでも学べる」を実現しています。

くわえて、図書室はなく、学年別に割り当てられている廊下の真ん中に図書の本を配架しています。これにより、貸出冊数は従来の1.4倍となったそうです。さらにくわえて、全フロア―に先生方の机がフリーアドレスで設置されていて、生徒は職員室に出向かずとも何時でも先生に質問ができる空間を実現しているそうです。そのため、テスト作成など機密性の高い仕事や打ち合わせのためのフリーアドレスの職員室は別途あるとのことでした。

「このような斬新な校舎で、生徒はどのように行動するのか。廊下と教室がガラス張り開放できる戸で仕切られているだけで、生徒が授業に集中できるのか。従来の教室で無いと落ち着かない生徒がでるのではないか。図書をあちらこちらに配架したが、手に取ってくれるのだろうか。などなど。」を関係者のみんなが心配していたそうです。しかし、研究会などで観察していると、若い生徒はすぐに慣れ、人が廊下を歩いていても平気で授業を受けています。「生徒はいくらでも変化してゆける無限の柔軟性を秘めていて、素晴らしいなと感じました。」と締めくくられました。


最後に会場提供くださった、戸田先生からCO☆PITの開発コンセプトについて話題提供されました。*2) 

初代CO☆PITは、2010年8月に「子供心」をメインコンセプトとして開発されたそうです。更改でもこのメインコンセプトは引き継がれ、「会社(普段の生活)と離れて欲しい」、「自ら学ばなければならないことを自覚して欲しい」との願いから100坪ほどの空間に「職人×新たな知恵×実践知」を創造する共創人材を輩出する学習空間として設計されました。そのため、キャンプファイヤーのエリアやハンモック、駄菓子やガチャガチャも置いてあります。さらに、様々なICTを利用して壁にも机にも書けるようにしてある、との説明がありました。参加者は、ガチャガチャに並んで楽しんでいました。


第2部は、「新しいCO☆PITを作ろう」をテーマに3チームに分かれてグループディスカッションして、結果を発表しました。


第1チームからは、「初めて来ても自動的に2回目」の提案がありました。自由にアイディアを出すことは初対面では難しいです。そのため、IT技術を使って、CO☆PITで対面した時には、「どっかで会っていますよね」といった親近感を持たせる設計の提案がありました。さらにくわえて、「縦の空間活用」の提案として、(1)中二階を作って土足厳禁として横になれる、などくつろげる場、(2)足湯、の提案もありました。

第2チームからは、「いまのCO☆PITをもっと自由」にこだわり「記憶に残る研修」の提案がありました。
そのために、非日常のリラックスできる空間としてのCO☆PITに入る前にVRで迷路から脱出できないと参加できない、など日常との切り離しの提案がありました。くわえて、ICTを活用して、空間全体を「昭和」、「戦前」など五感に訴えるイメージにする、などの提案もありました。

第3チームからは、前提条件として地方創生を目的とした学習空間とするとして、ICTを活用して、(1)現場の尾根から360度カメラによる中継を四方のスクリーンに投影するなどリアリティを共有する場の提供、 (2)多地点を同時につないで、お互いにホワイトボードの向こうの遠隔地の学習者が見えて、互いに書いている状態まで共有できる、など遠隔地との場の共有の提案がありました。くわえて、ライブラリアン機能として、AIとチャットボットを利用して、参考資料を提示する機能の提案がありました。

最後にクロージングとして、鈴木先生からお話がありました。

日本の学校は4間×5間の片側廊下というスタイルが1970年までは決まっていた。最初の竹岡先生の話題提供にあったようにその空間でもアクティブラーニングは可能である。今日のテーマの「学習空間」をキーワードに検索すると個別指導塾やドリルなどばかりである。ようやく3ページ目に山内祐平編著の『学びの空間が大学を変える : ラーニングスタジオ, ラーニングコモンズ, コミュニケーションスペースの展開』がでてくる。*3) この本は、学生が図書館を利用しなくなっているので図書館をどうすべきかについて述べられている。「学習空間」のデザインは、空間をデザインしただけではダメで、「学びの活動をデザイン」しなければならない。これは、自律的学習者になるためには、教えて貰う者から教える者へという学習経験が必要であり、ピアチュータリング、すなわち「上級生が下級生をどの様に教えるか」を設計しなければならない。ラーニングコモンズなど学習空間をデザインするだけではダメで、学びの活動デザインすることが大切であると締めくくられました。

全体の進行は、5期修了生の野田啓子様が務めてくださいました。

参考情報
*1) 追手門学院中・高等学校 新キャンパスプロジェクト
*2) CO☆PIT 
*3) 「学びの空間が大学を変える」

熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 峰内 暁世

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