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第28回 まなばナイトレポート

『リーサー教授に質問をぶつけてみよう!』


 平成29年7月1日(土)、第28回まなばナイト@東京を開催しました。


 28回目の開催となります今回は、「インストラクショナルデザインとテクノロジ: 教える技術の動向と課題」原書の編集者であられます、リーサー教授をお迎えしました。


 会は鈴木先生のオープニングトークから始まりました。リーサー教授はフロリダ州立大学で鈴木先生が学んだ恩師でもあり、当時の写真などもご披露いただいての導入トークから大いに盛り上がりました。



 続いてグループに別れ、持ち寄った質問についてディスカッション、ぶつける質問について話し合いました。グループワークに入る直前、リーサー教授からは10のトレンドについての1枚のスライドが示されました。



 15分ほどのワークの後、いよいよ質問をぶつけるセクションです。3つのグループから順番に質問をしていきました。質問は日本語で、その質問を博士後期課程の市村さんがリーサー教授に通訳、リーサー教授からの回答は鈴木先生が通訳という役割で進みました。


 リーサー教授の回答は熱がこもり、詳しく、濃く、長く、参加者としては嬉しいのですが、鈴木先生の通訳は本当に大変そうでした。(ありがとうございました)


 各グループがひとつずつ質問をして、小休憩を挟んでもう一巡、合計6つの質問とそれに対する回答で、大いに盛り上がりました。質問と、その回答のざっくりとしたまとめをご紹介します。


Q1. AIを応用したようなIDのトレンドがあるか。


A1. IDerをトレーニングすることを検討した研究があったが、イマイチだった。

他にもIDを自動化するという文脈での幾つかの研究は見られた。



Q2. Learning Analyticsのトレンドについて知りたい。どういう風にIDに活用されるのか。


A2. IDでは学習者への興味が常にあったが、その収集方法は限定的だった。

最近大規模にできるようになってきた。それも隠れて(それと知られずに)集めることができるようになってきた。


いろんなデータが集まりすぎるのが心配だ。どのデータに注目するのか、そのデータが意味するものが何であるかをどう考えるか、そこから改善にどう結びつけるかを考えるのは非常に難しい。

データがあればあるほど、何に着目しどう直していくのかというパターンは膨大で、これらを扱うのは非常にチャレンジングだ。



20%ほどの大学が関心を持っているが目的はドロップアウト分析。

38%が関心を示しているとの調査があるが、現実使えていない。


データを収集することが、重要なのは昔から。有名なエピソードは1957年のいわゆるスプートニックショックに端を発した教材開発。10年後の追跡調査では十分な成果が出ておらず、その原因は専門家の教材が高度すぎたと。

最高の教材を莫大な予算を投入する前に形成的評価が必要であると認識されるに至った。



Q3. (26章より)経済産業界にほとんどの高収入なIDerの仕事が集中しているとのことだが、どのような立場でどのような職業をしているのか。


A3. 昔はIDを学んだ人が大学でまたIDを教えるのがほとんどだった。

すこしづつIBMなどの大手企業に入るようになり、AT&Tではデザイナーが分析し研修を組み立てるなどして役割の認知が広がった。



実際の仕事をしながら内容の専門家とともにデザインの専門家として働くようになった。

行われていた研修を分析・改善し、45時間かかっていた研修が9時間で終えられるようになった。デザインの重要性が次第に認知されるようになり、職としての地位ができてきた。


軍や政治で働く人が多くシンガポールでも毎年数人のIDerが職を得ている。

エラーが減って品質が向上することに企業は関心を持つ。

IDerは、道具がどうなのかも知ったうえで、やり方を知らないのか、やりたくないのか現場もみて解決策を提示していくなど、いろいろなことができる能力が求められている。



富士山に行きたいとき、GPSはサポートしてくれる。これもパフォーマンスサポートだ。

研修をやっても無駄が多い、ちょっとは教えるが、その時にすぐサポートしてくれるものがあるほうがよいこともある。

シラバスの書き方を知らない教員が作成支援のツールを使うなどは、パフォーマンスサポートの好例だ。

Florida State Universityでは授業評価のためのサポートシステムを作った。

納税の申告など広く応用されている。


受けたくもない研修を何時間も受ける研修と、使える道具があるよと1時間のレクチャをする。どちらがよいか。

「新しいもの使え」「この研修してほしい」というリクエストを鵜呑みにするのではなく、

違うことがあるんじゃないと提案できるスキルが必要。


IDerの存在が知られるようになり、できる人が求められるようになり、なりたい人が増えてきている。中国の方が少し進んでいる印象もあるが、日本でもKatsu(鈴木先生)がやってくれている。



Q4. MOOCsでIDを取り入れようとすると、システムがすでにできていてうまく組み入れられない。いい事例はないか。



A4. MOOCsは大学の講義から始まり企業でも使われ始めている。

Courseraはいろいろなデータを分析しコース改善に活用しているようだが、

情報を出すだけではなくガイダンス・支援の面にまだまだ(ID的な)改善や応用の余地があるのではないか。


普及は見て取れるが、品質については玉石混合。ドロップアウト率が高いことが指摘されているが、部分的に学ぶ人には高い評価を得ており需給の合うところはある。

企業もMOOCsに注目しており、講座を従業員にチョイスしたり、また複数のMOOCsプロバイダ(にまたがる講座を)組み合わせたプラットフォームも見られるようになっている。


品質のいいMOOCを作りたければIDも必要になる。



Q5. Social Mediaを使って、どういう教育の活動に取り入れることができるのか。


A5. ソーシャルメディアは本当に学び方を考えているのか。昔は図書館で調べていたようなことが、何でもネットで調べられるようになった。みんながエキスパートになれるように、役割を変えたことは確かだが。


情報はネットで取れるようになり集合知の時代になってきてはいるが、教室での学びには邪魔になることがある。小グループでのディスカッションを教室外の時間に持って行ったりという工夫には使えるのではないか。


企業の調査で75%が「コミュニティ・オブ・プラクティス」に相性のいいプラットフォームという説もあるが、質問できる空気や文化が必要で、どうやって共有を促進するかという問題が相変わらずある。


われわれも何気ない会話から学んだりネットサーフィンや検索で何かを学んだり、学ぶ側がエンジンになり取りに行くのがインフォーマル。



Q6. 10のトレンドの中で、そのトレンドはあるか。無くなりそうなもの、伸びそうなもの。それぞれの関係などコメントをお聞かせいただきたい。


A6. トレンドとして挙げたものには古くからのものもそうでないのもある。Performance Improvement は25年前からあるが日本ではまだまだ。米国でも新いと感じる人には新しい。トレンドとはそういうもの。


Performance Supportはモバイルで超簡単になった。活用する人は多い。

Learning Analyticsは未知数だけどデータいっぱい集まる。どう活用するか、IDerの活躍の場は大いにあるのではないか。

ゲームは体験を学びに転移させるにはまだまだ工夫が必要。

OER 使ってほしいと思われるようになった。ただで使えるものが多いのは大きなメリット。同じものを作らなくて済むし、使いたい側は組み合わせ自由。


トレンドは全部知ってもエキスパートにはなれないが、少しでもネタを多く持っておくことはいいことでは。


私がIDやった1970年代は1つしか道具がなかったが、いまや多くの道具ができてきている。


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6つのQAを終えて、ちょうど時間になり閉会となりました。


訳本が出て3年を過ぎ、原書は4版が出ています。現在も今後しばらくも、インストラクショナルデザインとテクノロジーは切っても切れない関係にあり、リーサー教授から解説いただいたトレンドから、参加者はそれぞれに多くの気づき・ヒントを得られたことと思います。


まなばナイト終了後は懇親会でさらに盛り上がりました。


次回は2017年8月24日、名古屋にて開催予定です。


http://www.manabanight.com/event/manabanight29


まなばナイト実行委員・熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 加地 正典


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